ほっちのロッヂ  
         

撮影:パトラック

◇date 2020/03
◇所在 長野県軽井沢町

◇設計 パトラック/安宅研太郎+3916/池田聖太
◇構造 テクトニカ/鈴木芳典、五十嵐日奈子
◇温熱環境 イゼナ/前田朋子
◇外構 プランタゴ/田瀬理夫

◇施工 第一建設/小林竜二
◇外構 富士植木

・敷地面積 2478.67m2
・建築面積 257.86m2
延床面積 250.3m2

 

診療所とおおきな台所のあるところ「ほっちのロッヂ」は、長野県軽井沢町に立ち上げられた新しい医療と福祉とエトセトラな活動を行う場である。

活動の内容を制度的に言えば、デイサービスであり、訪問医療・看護のステーションであり、診療所であり、病児保育室である。しかし、ほっちのロッヂでは、医療者やスタッフ、利用者を含め、介護をする側/される側とか、サービスする側/される側、病気のあるなしといった立場をなるべく作らない運営が目指されている。あらかじめ決められたタイムテーブルに従って、全員で歌を歌ったり、絵を描いたり、ということもしない。スタッフを含め、そこに集まった人たちそれぞれが得意なこと、やりたいことを、時には一人で、時には一緒に、教えたり、教わったり、ということを大切にし、共に豊かに暮らすことを重視している。だから、みんなが集まる大きな部屋は作らずに、さまざまな活動を可能にする小さな場の集積として全体をつくっている。
立地する森のなかでは、隣接する学校の子供たちが放課後に遊びまわり、自然と施設内の活動に入ってきたり、話をしたり、お茶をしたりご飯を食べたりして、いつの間にか建物内でも時間を過ごしていっていい。そういうきっかけをたくさん散りばめたくて、建物の外形は凸凹していて、半屋外の庭をつくりそれぞれから出入りできるようにしている。
敷地はもともとカラマツ林で、倒木も多かった。建物と駐車場ができる範囲のカラマツや倒れそうなカラマツを伐採し、そのほとんどを製材所で製材して外装に利用している。
カラマツ林の林床は、植生調査をすると、200種類ほどの在来植物が繁茂する豊かな植生であることがわかった。そのため工事前にワークショップを開催し、工事範囲の林床をトレーに採取し保管した。これらは工事で傷んだ建物周辺の植生の再生に利用された。
軽井沢町の景観条例では、屋根の勾配を2/10以上にすることや軒の出を確保するなど、細かな外観の規定がある。医療や福祉の建築はなるべく平屋でフラットに過ごせる場が望まれ、1階に必要なものを並べると平面が大きくなって、勾配屋根を採用すると必然的に棟の高さが高くなってしまう。ほっちのロッヂではそうしてできる架構を利用しながら、それに沿って高い天井の部分をつくったり、気積を抑えるために天井を低く抑えたり、部屋の半分の天井を逆勾配にしたりと、空間のバリエーションを作り出している。それらが床から2000まで下がってくる垂れ壁と合わさって、小さな場の創出にうまく働いている。

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