imura art gallery tokyo

撮影:端裕人

◇date 2013/05

◇所在 東京都千代田区 3331arts chiyoda ♯206

◇設計 アタカケンタロウ建築計画事務所

担当/安宅研太郎

◇テーブル・棚・照明 土屋貴哉+アタカケンタロウ

京都を本拠地とするイムラアートギャラリーは、今回東京に新しいギャラリーを開くことになった。場所は3331アーツ千代田という廃校になった中学校で、ギャラリーとして既に数度の改修を経た教室のひとつである。廊下に面した壁は取り払われ、窓側に立てた壁の裏側がオフィスになっていた。

「京都のギャラリーは道路に面して全面ガラス張りで、外からほぼ展示の内容が見えるため、多くの人の目に触れる反面、中に入ってこない人が多い。だから東京のギャラリーは、中に入って初めて作品が見えるように廊下に対して閉ざしたい」というのがギャラリーからの要望だった。一方で施設運営者側からは廊下を歩いたときに様々な活動が見えることを重視しているため、中は見えるようにしてほしいという要望をうけた。この矛盾を解決することと、京都らしい繊細さや品をもつこと、表現として強く(これも要望のひとつ)ても展示作品とはバッティングしないこと等などを念頭にデザインを進めた。

介入は最小限とし、窓側の壁は一部撤去し、ギャラリーと連続したワークスペースをつくり、廊下側には矛盾を解決するような新たな壁を作ることにした。

廊下を歩いていると 「展示物は見えないけれど、 ギャラリーの一角にあるワークスペースの光景だけが、白い壁面の中に切り取られ続ける」という壁面を廊下側に制作した。視界は大きなテーブルを切り取り続け、次第に正面の壁面だけが全貌を現し、また消えていく。

ガラスの間に38mm幅の紙の帯をぶら下げ、528枚に及ぶ帯の間隔や角度は一枚一枚違う角度に、厳密にコントロールされている。帯と帯の間から見える視野の範囲を一枚づつ補助線を引いて決定し、それを延々と繰り返すことで、この作品は成立している。

この作品はまた、ワンルームのギャラリー空間内に目には見えないけれど、経験的には感知可能な場所の差異(見えない境界線)を発生させている。

ワークスペースの棚やテーブル、照明は、天井に露出した躯体のコンクリート(この空間内で一番古い仕上げ)を参照して、アーティストの土屋貴哉氏がスーパーリアルに絵を描いたもので、絵画作品でもある。

home works
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